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カリフォルニア州における相続について①

※このコラムはMSLGオンラインマガジン第9回として投稿されたものです。

 

こんにちは、弁護士の戸木です。
今週末は、サンフランシスコで、「プライド」というLGBTQの方々の社会運動の場となっている大きなイベントが開かれました。昨年見に行ったときは、コロナ禍が明けた反動からか非常に賑わっていました。サンフランシスコは年中寒く、さらに今週末は天気もあまり良くなかったようですが、今年は昨年以上にさらに熱いイベントになったに違いありません。

 

さて、今回は、私が日本で執務をしていたときから多く取り扱っていた相続に関するお話です。

 

相続というと、まず生前の相続対策から考えることが多いです。日本では「争族」等と騒がれていますが、アメリカではエステートプランニングという名称で、相続・老後対策を行うことが一般的になっています。

 

エステートプランニングで作成する書類として主なものは、遺言、トラスト(信託)、パワーオブアトーニー(財産・健康に関する委任状)、アドバンスヘルスケアディレクティブ(健康に関する事前指示書)、HIPAAオーソライゼーション(健康情報の開示同意書)と多岐にわたっていますが、まず、遺言やトラストを作る際に考慮する、(1) 相続人の範囲、(2) 法定相続分、(3) 遺言・トラスト(遺留分含め)、(4) 相続税から触れていこうと思います。

 

相続人の範囲ですが、日本でもカリフォルニア州でも、配偶者がいる場合は、配偶者は必ず相続人になります。

 

日本では、配偶者と並んで相続人になる範囲として以下のような順位が定められています。
(i) 直系卑属(子・孫等)
(ii) 直系尊属(父母・祖父母等)
(ii) 兄弟姉妹(先に亡くなっている兄弟姉妹がいれば甥姪まで)

 

カリフォルニア州でも、配偶者がいる場合には、配偶者と並んで相続人になる範囲は似通っていて、以下のとおりです。
(a) 直系卑属(子・孫等)
(b) 父母
(c) 父母の直系卑属(兄弟姉妹・甥姪等)

 

一方、配偶者がいない場合には、上記(a)~(c)に加え、以下も相続人の範囲になります。
(d) 祖父母、祖父母の直系卑属(従兄弟姉妹等)
(e) 先に亡くなった配偶者の直系卑属
(f) 最も近い血族
(g) 先に亡くなった配偶者の父母、当該父母の直系卑属(配偶者の連れ子等)

 

日本と比べ、カリフォルニア州ではかなり広い範囲の人が相続人になり得ることが分かります。

 

日本では、被相続人の全ての遺産について、配偶者と、上記(i)~(iii)うち先順位の相続人が、一定の割合で分割します。

 

カリフォルニア州では、被相続人の財産を、共有財産と特有財産とに分けるところから始まります。共有・特有の区分けは、日本では離婚の場面でしか登場しない概念なので、なかなか馴染みにくいかもしれません。カリフォルニア州では、離婚をせずとも、共有財産の半分については配偶者のものだと考えられていますので、相続のときにも、まず共有財産の半分については当然に配偶者のものと整理されます。その上で、配偶者は、残りの共有財産について相続することができます。すなわち、共有財産について配偶者が全てを取得するのです。日本では、子がいる場合には、離婚しても相続しても配偶者の取得分の原則半分ですから、大きく違いますね。詳しくは掘り下げませんが、個人的には、カリフォルニア州の整理の方が筋が通っているように思います。

 

具体的な分割方法は、不動産や動産についての特別規定もあって非常に複雑になっているのですが、原則的には、配偶者がいる場合は、上記のとおり配偶者が共有財産を取得し、配偶者と上記(a)~(c)のうち先順位の相続人とで特有財産を分割します。割合は相続人の状況によって変わりますので、今回は割愛します。配偶者がいない場合には、上記(a)~(g)のの相続人のうち先順位の相続人が取得します。

 

相続人の範囲や法定相続分は複雑であるものの、この複雑な法定相続分を検討・計算しなければならなくなる場面は多くはありません。というのも、多くの方が遺言やトラストを作っており、それに従って分割がされるからです。

 

カリフォルニア州で遺言・トラストが多く利用されている背景は色々とあると思いますが、個人的には、戸籍制度が存在しないこと、それに関連してプロベート(日本でいう遺言検認手続)の中で相続に関する情報が公開されてしまうこと、また、遺留分が存在しないこと、などが挙げられると思います。

 

アメリカには、日本のような戸籍制度はありません。そのため、家族関係を証明する書類がなく、相続人の調査は容易ではありません。相続人を調査する業者(探偵のような位置付けです)がいるほどです。
そのため、誰かが亡くなった場合には、家庭裁判所においてプロベート手続を取らなければならないこととし、さらに、その手続の中で相続に関する情報を公開することで、「私こそが相続人だ」と信じる人に対して名乗り上げる機会を与えることにして、相続人を取りこぼさないような仕組みにしているのです。もちろん時間がかかりますし、プロベートに関する一般的な情報は新聞に、もっと細かな情報も裁判所やウェブサイトで公開されてしまいますので、これを嫌がる人が多く、遺言とトラストを組み合わせたり、受益者を指定する銀行口座や投資口座、保険等を利用したりして、プロベートの対象となる財産を最小限にする工夫をしています。

 

日本では、配偶者・直系卑属・直系尊属には、最低限保障されている相続分として遺留分がありますが、カリフォルニア州にはありません。意図せずに遺言から除外されてしまった配偶者や子の救済規定はありますが、意図的にこれらの人を除外したのであれば、遺言者の意思が優先されます。もっとも、上で説明したように、共有財産の半分は配偶者のものと考えられていますので、この分を奪うことはできません。

 

細かい話になってしまいましたが、日本とカリフォルニア州では考え方が異なりますし、日本人であっても、住んでいる場所や財産がある場所によって、どちらの法律が適用されるかが変わります。かなり複雑なので、お困りのことがあれば、是非具体的な情報を伝えた上で、弁護士による助言をもらった方が良いと思います。

 

この点も含め、次回以降、遺言・トラストの使い方、相続税、その他のエステートプランニングについて引き続きお話ができればと思います。

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