アメリカの法律 In-and-Out Vol.03

サンフランシスコ・ベイエリア情報誌のbayspoにコラムが掲載されました。

 

ハミコ、起業する! の巻

皆さまこんにちは。弁護士の戸木です。前回に続き、「ハミコ(仮名)、アメリカに来る」という設定の下、彼女が日々直面する法律問題をご紹介していきます。  

渡米して早1年、日本でピアノ講師をしていたハミコは、アメリカでも仕事を始めたくなりました。職探しを早々に諦め、日本人向けのピアノ教室を立ち上げることにしたようです。しかし、個人事業主が良いのか、法人を設立した方が良いのか。法人といっても、Corporation、LLC、LP…とさまざまな形態があり、何を選べば良いのか分かりません。  

日本人がアメリカで仕事を始めるにあたって、まず考えるべきなのは就労資格です。ハミコはグリーンカードを取得できたので問題はありません。家族の転勤等に伴って来た方でも、LビザやEビザ保持者は就労可能です(2021年11月以降はEADの取得も不要になりましたが、“S Designation”が必要なことをご留意ください)。なお、J-2ビザの方は別途申請が必要で、残念ながらF-2ビザの方は就労はできません。  

1人で起業するとき、個人で始めるか法人を設立するかは、「手続きの煩雑さ」と「リスクを全て自分が被るかどうか」のバランスを考えましょう。個人なら自分の名前で即日スタートできますが、法人の場合、定款(ていかん)を作ってSecretary of Stateに登録したり、個人とは別に法人のTax Returnをしなければならなかったりと、色々な手続きが出てきます。一方で、大きな債務を抱えて払い切れなくなってしまった場合、個人であれば全財産を失いかねませんが、法人であれば個人の財産は守られます。
 

実際に生徒が集まるのか知りたかったハミコは、まずは個人で始めることにして、安いウェブサービスを使ってウェブサイト、申込みフォーム、プライバシーポリシーをこしらえました。カリフォルニアにはCCPAという世界的にも厳しい個人情報保護法がありますが、対象になるのは年間25ミリオンドル以上の収入があったり、個人情報の売買で収入を上げている場合等に限られていますので、スモールスタートの場合はあまり気にしなくても大丈夫です。とはいえ、念のため弁護士に相談しておくと安心でしょう。  

さて、日本人向けのピアノ教室というニッチなビジネスは順調に行くのでしょうか。次回は、法人設立にまつわる話題を中心にお話ししたいと思います。では!

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