アメリカの法律 In-and-Out Vol.06

サンフランシスコ・ベイエリア情報誌のbayspoにコラムが掲載されました。

 

Vol.06 : ハミコ、事故に遭う! の巻

皆さまこんにちは。弁護士の戸木です。前回に引き続き、「ハミコ(仮名)、アメリカに来る」という設定の下、彼女が日々直面する法律問題をご紹介していきたいと思います。  

前回は飲酒運転で逮捕されてしまったハミコ。安全運転を気に掛けていたにもかかわらず、ドーン! 青信号を通過しようとしたところ、赤信号を無視して突っ込んできた車が衝突してきました。警察を呼んで実況見分を待つ中、ふと近くのバス停に目をやると「Injured?」と書かれた弁護士事務所の看板が目に飛び込んできました。  

日本でもアメリカでも、交通事故を専門にしている弁護士が多くいます。交通事故によるけがや物損は金銭賠償で解決するのが一般的で、通常は保険会社から支払われる保険金によって賄われます。そのため金銭の回収可能性が高く、弁護士としても報酬を確保しやすいので、専門分野として選択されやすいというカラクリがあります。  

さて、保険金でカバーされるのに弁護士が登場する必要性はあるのでしょうか。保険金といっても、事故の態様から自動的に損害賠償の金額が決まるわけではありません。損害の有無(むち打ち等の自覚症状だけだった場合等)や、損害の算定(車の破損や怪我をどのように金銭換算するか)が争いになることは少なくなく、また、双方の過失割合の問題もあります。

さらに、保険会社としても支払額を少なくしたいので、自発的に高い金額を提示してくれるわけでもありません。弁護士は訴訟提起を見据えながら交渉ができるので、保険会社も無下に対応するわけにいかず、弁護士の介入によって提示金額が上がることが多いのです。  

米国弁護士の報酬はタイムチャージ制が一般的ですが、交通事故専門弁護士に関しては完全成功報酬制としている弁護士が少なくありません。理由は、前述の回収可能性が高いことが影響しています。とはいえ、報酬額の目安は「勝ち取った金額の3分の1」と安くはありませんので、費用対効果をきちんと考えてから依頼するかどうかを決めましょう。  

ハミコが冷静に警察を呼んだのは正解でした。警察による捜査報告書(Police Report)がないと保険金が下りないことがありますので、くれぐれもお気を付けください。

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