サンフランシスコ・ベイエリア情報誌のbayspoにコラムが掲載されました。
Vol.11 :ハミコ、パワーオブアトーニー(POA)を作る! の巻
皆さまこんにちは。弁護士の戸木です。前回に引き続き、「ハミコ(仮名)、アメリカに来る」という設定の下、彼女が日々直面する法律問題をご紹介していきたいと思います。
前回、相続対策・Estate Planning(ESP)として、遺言やトラストを作ったハミコでしたが、作成した書類の中にPOAという書類がありました。
「後見人」という名前をお聞きになったことがある方は多いと思います。日本には成年後見制度、カリフォルニアにはConservatorshipという制度があり、いずれも、裁判所が、判断能力を失った本人のために財産管理や身上監護を担う第三者(後見人・Conservator)を選任するものです。後見人には、定期的に、裁判所に対して報告等を行う義務が課せられるなど、家族間であっても自由が効かなくなりますので、日米ともに敬遠されている制度です。
POAは、裁判所の監督なく、任意に後見人を選任できる制度だと考えると分かりやすいでしょう。具体的には、法律で決められた文言を記載した書類(この書類自体をPOAといいます。POAは委任状という意味でも使うので、紛らわしいですね)を用意し、選任する後見人(この選任される方のこともPOAというので、さらに紛らわしくなっています)の名前を入れ、Notarize(公証)することによって完成します。
非常に簡単なため、実際に活用されている方は多いのですが、後見人として非常に強力な権限を持つ一方、裁判所の監督がないためにPOAの暴走を止められないケースがあり得ることに十分ご留意ください。実際、POAが預金口座からお金をネコババしたとか、本人が望まない高齢者施設に押し込んでしまったなどという案件を散見してきました。
ハミコには1人娘がいたので、迷う余地はありませんでした。ハミコが死んでも娘が相続しますので、娘にはネコババをするメリットはありません。しかし、そのような方がいない場合は、お気を付けください。POAとして選任しようとしている方は、本当に信頼できる方ですか? よく熟考して、決断するようにしてください。