アメリカの法律 In-and-Out Vol.07

サンフランシスコ・ベイエリア情報誌のbayspoにコラムが掲載されました。

 

Vol.07 :ハミコ社長、レイオフを行う! の巻

皆さまこんにちは。弁護士の戸木です。前回に引き続き、「ハミコ(仮名)、アメリカに来る」という設定の下、彼女が日々直面する法律問題をご紹介していきたいと思います。  

ハミコが経営している「日本人向けピアノ教室」が好調で従業員が増えてきたのですが、業務の効率化及びコスト削減を行うため、一部を解雇することになりました。日本では、雇用期間中に雇用主が被用者を解雇することは難しく、相応の理由や厳格な手続きが求められます。一方、カリフォルニア州では、雇用契約は「at-will」とされていて、雇用期間中いつでも、雇用主・被用者どちらからも、理由なく契約を終了させられます。つまり、雇用主が理由なく被用者を解雇することができるのです。  

これを知っていたハミコは、特に心配をすることなく従業員を解雇しました。しかし、数カ月が経過したある日、弁護士から通知書が届きました。「解雇は年齢差別で違法だ」「法律所定の休憩を与えられていなかった」等として、「レターを受領してから7日以内に2万ドルを支払え」と書かれています。  

「at-will」であっても、すべての解雇が許されているわけではありません。解雇が差別(人種、肌の色、宗教、性、国籍、障害、年齢等)に該当する場合や、公益通報に対する報復であった場合等、一定の場合には解雇は違法とされ、損害賠償が認められます。従業員が40歳以上である場合には、ADEAという特別法によって年齢に関して特に保護されている点は覚えておく必要があります。また、残業代が支払われていない場合や、法定の休憩(30分のMeal Breakや10分のRest Break)が付与されていない場合には、未払賃金・プレミアム等を請求できます。なお、米国では「パワハラ」は違法とは扱われていません。

ハミコは差別をしたつもりもなければ、休憩についても適切に与えていたつもりでしたが、弁護士に相談をしたところ、客観的には弱い部分があると指摘されてしまいました。訴訟を戦い抜こうとすると弁護士費用が数十万ドルかかってしまうことも考慮し、一定額を支払う形で早期和解に応じることになりました。  解雇自由のアメリカといえど、解雇を巡って争いになることは少なくありません。雇う側も雇われる側も、日本とは異なる雇用法規制があることを覚えておきましょう。

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